B.B.キングに会いたい


確か今年の1月15日の午前中だったと思う。
家事をしながらB.B.キングの最新アルバム「reflections」を聴いていた。

音楽を聴く時、BGMとして聴けるものと聴けないものがある。
お気に入りのミュージシャンの曲を聴く時は、
どうしても熱が入ってしまい、
BGMのつもりがいつしか手は止まり、耳をすましている。

「今のフレーズはカッコよかった。
ドラムとベースの息が合っている。
ここの盛り上げ方は素晴らしい・・・」などと
一人あれこれ思いながら聴いている。

あの時、BBの声がいつもと違って私の耳に響いてきた。
「・・・前よりもハスキーになっている。大丈夫かしら。」
78歳という年齢が頭をよぎる。
「BB・・・どうかいつまでも元気でいて欲しい。」と思った瞬間ハッとして、
「日本に来ることを待っていたら後悔する。BBに会いに行かなくては!
BBがルシールを弾いているところをこの目で見たい!」
という思いが突然こみ上げてきて、急いでパソコンの前に座った。

この時の自分の行動は、今振り返ってみてもビックリする。
何かにかられて衝動的に動いたとしかいいようがない。
とにかくBBのスケジュールを知りたいと思い、
シカゴ在住の菊田俊介さんにすぐメールを書いた。

菊田さんは、昨年の10月24日、シカゴ美術館のオーディトリアムで
「Evening with B.B.King」というイヴェントが行われた際、
ブルースのキング、BBと共演された方だ。
以前、この時の日記を読ませていただいたが、
どんなに菊田さんが憧れのBBと会って感激されたか、
その胸の内が私にも伝わってきた。

早速、菊田さんからお返事をいただく。
まずB.B.キングのオフィシャル・サイトのアドレスを教えてくださり、
そして私はある文面に釘付けになってしまった。
それは、4月9・10日の両日、
インディアナ州メリルヴィルにある
スター・プラザ・シアターで行われるB.B.キングのショーに、
ジョイントでココ・テイラーと一緒に出演するというもの。
チケットをとるためのサイトも添付されている。
菊田さんはBBとの再会を心待ちにしているらしい。

ブルースのキングとクイーンが一同に介し、
菊田さんも出演される。
もう一人のシンガーはボビー・”ブルー”・ブランド。
「行きたい・・・・」という思いと
「とても行かれない」という思いが交錯して、
パソコンの画面を見たまま呆然としてしまった。

メリルヴィルはシカゴからおよそ車で1時間程の距離。
ブルースの街、シカゴにまた行きたいという考えも浮かんで来て、
とにかくシカゴまでいくらで行けるのか、
それだけでも調べてみようと思って、週明けの19日、
軽い気持ちで近くの旅行代理店に足を運んでみた。

「4月だったらJALのパックで、シカゴまで往復6万4千円で行けます。」
一瞬その言葉に耳を疑った。
九州や北海道へ行くのと同じぐらいではないか!
内心驚きながら「安いですね・・・」と答えると、
間髪入れず「予約がとれるかどうか試してみましょうか」と尋ねてきた。
私が戸惑っていると、
「大丈夫です。すぐ取り消せますから。」と説得され、
その場でシカゴ行きの席は確保されてしまったのである。

この事は家族の誰にも話していなかった。
無理だと言われるにちがいない。
そう言われたらキッパリ諦めようと思い、
覚悟をしつつ事情を説明した。
そうしたら意外にも、
「もう1万円プラスすれば、シカゴ経由でメンフィスまで行けるんでしょ?
この際だから思い切ってメンフィスにも行ってきたら?」
というこたえが返ってきた。

メンフィスはブルース発祥の地と言われ、
エルヴィスのホーム・タウンでもある。
ビール・ストリートには「B.B.King's Blues Club」もあり、
何十回ともなくBBはそこでギグを行っている。
まだ行ったことがない私にとっては、憧れの場所。
しかし、B.B.キングに会うことだけを考え、
ありがたい家族の言葉に感謝しながら、
今回はシカゴにだけ行くことした。

もう一人のアイドル、エルヴィスが亡くなった時、
私は小学生だった。
・・・会えるはずもなかった。
でもBBは生きている。
それもまだ現役で活躍し、「North American Tour 2004」の一環として、
メリルヴィルにやってくる。
私の心の中は、BBにようやく会えるという歓喜の想いと、
夢を見ているのではないかという気持ちが混ざり合い、
現実とのギャップから、
この事実をしばらく受け止めることができなかったのである。

<04・4・21>

reflections


B.B. with Elvis
At a WDIA Charity Concert